村上春樹と詩情

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長い間、村上春樹の物語の世界が解りませんでした。自分には文学的な感性が欠けてゐるのではないか、と非道く不安になつた覚えがあります。僕が、まだ二十代の頃、彼の作品を相当、熱心に読んだ憶えがあるのですが、からうじて理解できたのは現在は講談社文庫に収録されてゐる『1973年のピンボール』といふ初期の作品くらゐでした。

先般、古本屋(ブック・オフです)に立ち寄ると百五円コーナーの書棚に村上春樹の『1Q84』(新潮社)の二巻目の単行本が置いてありました。商品の状態は、すこぶる良好で立派な装丁の同書を思はず衝動買ひしてしまひました。僕は貧乏だからリアルタイムで話題の書籍を読むことは殆んどできません。けれども、人々の熱狂が醒めた頃には値段もそれに呼応するやうに下がるので、かつて話題になつた本を安く手に入れることができます。さうして、かつて人々が争うやうに手にした本を古本屋で見付けて来て後追ひで読みます。少し時間がずれるだけで貧乏人にも本来高価な本を読むことができるのは何ともありがたいことであります。

百五円で購入した二巻目の村上春樹の作品を一章だけ読みました。昔とは異なり気持よく読み進めることができたのは意外でした。同書の単行本は全三巻で完結するやうですね。僕は一巻目から読んで初めから終はりまでを通読したいと思ひました。思ふに彼の書く作品は僕が云ふまでもなく立派な散文で構成されてゐます。さうして妙な云ひ方になりますが詩的な散文なのです。詩を読むときの感覚に近いのですね。あたかも一流の詩人が書いた上等な散文のやうなのです。僕は殆んど確信してゐます。今度は村上春樹のくだんの三部作を愉しみながら読み終へるだらうことを。

第二巻は廉価で手に入れることができましたが第一巻と第三巻は僕の行き付けの古本屋には今のところ出廻つてゐないので『1Q84』を読み始めることができないでゐます。今週末は、お隣の市にも足を延ばして自分の行ける限りの古本屋に行きましたが置いてありませんでした。いよいよとなればアマゾンで購入するつもりです。けれども、ご承知のとほりアマゾンで本を購入するとなると、どんなに安くても原則として全国一律250円の送料がかかつてきます。さういふ次第で何とか古本屋の百五円コーナーで入手したいところです。

それにしても不思議です。詩と流行の小説が思はぬところで通底してゐたとは。さうして今更ながら詩を理解するといふことは、きはめて大切なことなのだな、と思はされました。思ふにポエジー(詩情)といふのは全然、理屈つぽくありません。むしろ、その対極に位置してゐて微妙でデリケートな感性です。しかし、微妙でデリケートだから軽視してもいい、といふものではありません。言葉を換へて云へば詩情とは分析的ではなく直覚的です。ポエジーこそが村上春樹文学の世界の扉を開く重要な鍵ではないか、と僕は理解してゐます。この理解が正しいか否かを検証するべく早く『1Q84』を全巻を揃へて読み始めたいと思つてゐます。同書を全巻読了してから感想を当ブログで記事として綴る予定ですので乞ふご期待!


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中沢啓治氏逝く

はだしのゲン

漫画『はだしのゲン』の作者である中沢啓治氏が昨年末に肺癌で死去されましたね。ヤフーのヘッドライン・ニュースで知りました。享年73歳だつたさうです。僕は同書の愛読者のひとりですから氏の訃報に接して秘かに哀悼の意を表しました。

『はだしのゲン』は昭和48年から週刊少年ジャンプといふ集英社の漫画雑誌に連載された同氏の被爆体験をベースにした自伝的な作品です。たちまちベストセラーとなり英語やロシア語など10箇国以上に翻訳されて映画やアニメーションにもなりました。

僕は原爆投下後の広島の惨状について、これほど克明に記した本を読んだことがありません。では同書は悲惨きはまる何の希望もない読むに堪へない悲劇的な漫画か、といふとさうでもないのです。実に面白い漫画です。面白い漫画でなければベストセラーになる道理はありますまい。何せあの激辛評論家の呉智英が同書の中公愛蔵版の最後に「不条理な運命に抗して」といふ詳細な解説を書いてゐるくらゐであります。

面白いと云つても、もちろん腹を抱へて、げらげら笑ふといふ意味で面白いのではありません。ひたすら感動するのであります。虚心坦懐に、この漫画を読むときに決して涙なしには読めません。かういふ作品は滅多に存在するものではありません。いはゆる名著ですから。さうして単に反戦反核を訴へてゐるだけの漫画ではありません。この点は評論家、呉智英も指摘してゐる点であります。僕は同書は反戦反核以上の作品であると断言して憚りません。

それでは、どういふ内容なのか、と疑問を持たれる方がをられるかもしれませんが、それこそが読書の醍醐味であります。内容を掻い摘んで話したら全くの興ざめであります。タネ明かしされた後に手品を見るやうなものです。本記事の目標とするところは読み手に同書を読んでみたいといふ気持を惹起せしめ本屋の店頭にあつたら、それを入手したいといふ衝動を煽ることにあるのです。

したがつて、どういふ漫画かは読者諸賢が本記事を読んだことを契機に実際に手に取つて読んでもらふに如くはありません。どうか、たかが漫画ではないか、といふ色眼鏡で見ることなく同書を素直な心で読んでみてください。落涙必至の名作です。


謹賀新年

古稀祝①

新年明けましておめでたうございます。読者諸賢の旧年中のご愛読、誠にありがたうございます。本年は一層の記事充実に励みますので変はらない応援をよろしくお願ひいたします。

一月二日にオートバイの乗り初めをしました。自分の住まひから静岡県に位置する浜名湖近くの舘山寺といふところまで行きました。午前中に出発したので空は晴れてゐるにもかかはらず往路は非常に寒く感じたのですが復路は快適な走りを愉しむことができました。

この時季にオートバイで走行しても帰りは全然、寒くなかつたのであります。浜名バイパスを相当のスピードを出して(具体的な速度は表記しません)走行したのですが冷たい向かひ風を全身に浴びても一向に寒くないのであります。

といふのも舘山寺の温泉に随分、長いあひだ入つてゐたので身体中がぽかぽかして、いつまでも温かさが持続してゐたのです。オートバイで走行してゐるときにも温かさは抜けないのですね。云つてみれば見えないバリアで守られてゐるやうな感じです。こんな体験は初めてでした。思ふに面白くて実に不思議な体験でした。

一月二日に舘山寺に行つてきたのは何も温泉に入るためだけではありません。家族で両親の古稀のお祝ひを行ふためでした。僕はワンボックスカーで出かけた家族とは別に、すぐ下の弟の所有するオートバイを借りて舘山寺のホテルまで向かひました。

今回、三人の兄弟で企画した(と云つても発案は一番下の弟による)お祝ひの席を父も母も喜んでくれた、と自惚れてゐます。

僕の今までの人生においてベスト・スリーに入るやうなご馳走を食べ、眺望のいい温泉を満喫し、ちよつとしたバイク・ツーリングもできて充実した一日を過ごすことができました。

願はくは、僕と共に読者諸賢の2013年が充実したよい一年になりますやうに。やはり全体的に描写が足りませんね(苦笑)。


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プロフィール

ヨシ樹

Author:ヨシ樹
昭和に生まれ、平成を生きる日本男児。
東京の大学を卒業して故郷の愛知県に戻る。
肉体労働や家庭教師、塾講師を経て現在に至る。
現在、未曾有の大不況下で苦しい転職活動を余儀なくされている。
経済状況は極度の貧乏。某市内の賃貸マンションを棲家としている。
いわゆる「勝ち組」「負け組」という二元論的なステレオタイプが大嫌い。
趣味はブログ執筆、読書、六弦ベース、オートバイ等々。ちなみに大型自動二輪免許保有。かつてハーレーを所有。
夢はオートバイでの海外ツーリング。具体的にはユーラシア大陸をBMWで走破することなどを考えている。
日本経済の酷いデフレを憂いつつも某市のリサイクル・ショップや古本屋によく出没する。
実は牧師の息子であり、幼い頃から聖書と教会に親しむ。

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